幻の夢 〜施設の子どもたち〜

監督・父の豪田トモです。

長野県は軽井沢町にある児童養護施設・軽井沢学園さんとは
講演会で訪問した事がご縁となって、
すこ〜しだけご支援をさせていただいていますが、

職員の高根英貴さんが書かれている日記がとっても素晴らしいので、
許可をいただいてご紹介させていただきますー。

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 「ボクのお母さんはいつ迎えに来るの?」

週末になる度、タケシ(仮名)は職員に尋ねます。
小学校へ入学したばかりのタケシは、2歳の時に軽井沢学園へ入所しました。

入所当初は面会に訪れた母でしたが、
今では連絡が途絶えタケシに会いに来ることはありません。

そんな状態がここ数年続いており、
きっとタケシは母親の顔をはっきりとは覚えていないでしょう。

「お母さんはお仕事が忙しくてタケシくんに会いに来れないんだよ。」

と、まだ色々な事が理解できないタケシに対し職員はそう話します。

軽井沢学園には、
2歳から18歳の計50人の子どもたちが一つ屋根の下で暮らしています。

入所理由や家庭事情は様々であり、
帰省(一時的に親元へ帰ること)で家に帰ることが出来る子と、
帰るどころか親に会うことすら出来ない子もいます。

ですから、全く家に帰れないタケシにとって、
週末帰省する子どもの後ろ姿を玄関先で見送るということは、
羨ましくて切ない瞬間なのだろうと私はいつも思っています。

そんなタケシがある朝

「ボク昨日お母さんに会ったんだよ。」

と、他の子に自慢げに話していました。
他の職員の話では、最近タケシはそのような話をよくするそうで、

幻想?妄想??

などと少し気になった私は、
タケシを傷つけないよう別室に呼んで話を聞くことにしました。

「ねえ、最近お母さんによく会うんだってね。」

そう尋ねると、タケシは

「うん、昨日ね、お母さんと公園に行ったんだよ。」

と、さらりと話します。ますます心配になり私は更に尋ねました。

「でもタケシくん、昨日は一日中、ここにいたよね。
一体いつお母さんと会ったの?」

そう尋ねた次の瞬間、タケシから返ってきた言葉に胸が苦しくなりました。

「・・・ボクね、

お母さんと夢の中で会ったの。

ボク寝る前にお母さんに会いたいって思うと、

お母さんが夢の中に出て来るんだよ。」

更に話は続きます。

「でもね、今日はボク
仮面ライダーKABUTOに会いたいからお母さんには会わないんだ!」

と。

幼い子どもが母を慕いこの学園で暮らすために身に付けた術(すべ)。
皆そうやって必死に生きている。

そんな子どもたちに対し、
本当の親には到底なれない我々職員に一体何が出来るだろう。。。

せめて、学園に来て良かったと少しでも感じてもらうために、
この子たちをもっともっと大事にしたい。
そんな気持ちにさせられたある生活の一場面でした。

児童養護施設は、
家庭的に恵まれない子ども達の生活している施設ですが、
ここで暮らす子どもの大半が、何らかの虐待を受けて入所しています。

今、児童養護を語る上で"虐待"というキーワードは
切っても切れないものであり
「児童養護施設=虐待を受けた子どもの施設」
と言っても言い過ぎではないと私自身思っています。

そのくらい身近に起きている虐待の問題。

親が悪いとひと言で片付けるには余りにも無責任であり、
格差社会、雇用や貧困の問題、家族の孤立化等、

虐待とは、子育てしづらい世の中であるが故に
起こってしまう社会全体の問題であると知っておきたいところです。

私は、この軽井沢学園に児童指導員として就職し、
今年で14年目となります。

このコーナーでは、
意外に知られていない児童養護施設のことを少しでも多くの方に知って頂くために、
私が14年間務める中で起こった様々な出来事や、
日ごろ感じていることなど現場サイドからお届けいたします。

余談ですが7~8年ほど前、ある日突然私は子ども達から
"たかねっち"と呼ばれ始め、その呼び名が代々受け継がれて今に至ります。
今後とも、たかねっちをどうぞよろしくお願いします。

(文:高根英貴さん)

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