高校時代の友人から見た豪田トモ

企画・監督の豪田トモです。

20年近く僕の破天荒な人生を傍から見て来た高校時代からの友人が、
『うまれる』について、僕について、
とても興味深い日記を書かれています(笑)。

何だか懐かしく、面白かったので、
本人に許可をもらって文面そのままで掲載させていただきますー。

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先日、11月6日からシネスイッチ銀座などで封切りされる、
ドキュメンタリー映画「うまれる」の試写会に招かれて観てきた。
http://www.umareru.jp/

すでにテレビや雑誌などいくつかのメディアに取り上げられ、
10月30日の朝日新聞(関東版だけかも)にも、出産関連の記事の中に掲載されていた。

4組の夫婦が直面する出産にまつわるそれぞれの体験や重い現実を、
監督である豪田トモ氏自ら回し続けたカメラから捉えるドキュメンタリーである。

出産はもちろん、障害・不妊をテーマにしたドキュメンタリーは世にたくさんある。
しかしその多くは、刹那的な悲哀と愛情の確認という予定調和の中で、
お涙を頂戴するものではないだろうか。

しかし、この映画は視点がドライというか常に第三者的で、
この分野のドキュメンタリーにありがちな「ここでこう泣け」という観客の感情の誘導や、
恣意的な演出は抑えられている(音楽はかなり盛り上がるのだが)。

ほぼ全面に渡り、4組の夫婦の独白とその様子を追う。
つるの剛志さんによるナレーションも誘導的なセリフは入らず、
淡々と登場する夫婦やお子さんの事実を伝える。

もちろん、自然に涙がこぼれるシーンはいくつもあるが、
そのとき「自分はなぜ泣いているのだろう? 感動しているからなのか? 
可哀想だと思うからなのか?」とその涙の意味がわからなくなる。
そして、それが本当に感動的なことなのか、果たして可哀想なことなのかもわからなくなる。

つまりは、記号化できる感情のトリガーを引くのではなく、
観る人それぞれの心の奥底にあるものに、視点や感想を委ねているのだと感じた。

この映画は明確な結論となるオチはなく、テーマは緩やかに共有されているけれども、
観た人が感じたことがこの映画の一つの答えになっている。
そこがとても印象的だった。

もう一つ僕が感じたことは、この映画を撮った豪田監督が、
フィルムを通して自分自身もその根底にあるものを学ぼうとしているのではないか、
そしてそれはまだまだ途中なのではないか、ということだった。

北野映画のように、視点が多面的かつドライで、どこまでも素直で純粋である。
出産や子育てが絵空事の美しい出来事ばかりではなく、
しかし悲しいことばかりでもないという、浮世の不条理や混濁も表現されているように感じて、
そこも斬新だった。

マイミクの方も時間が許せば、足を運んでみてほしい。
出産期や育児中の夫婦はもちろん、独身男性などにもお勧めです。

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G君とは、高校1年生の教室で初めて出会った。

スラリとした体躯でサッカー部所属、何事にも物怖じせずチョイワルなG君は
今で言う「リア充」の典型例であり、クラスの中心人物のひとりだった。

マイノリティ道を猪突猛進していた自分とは本来であればあまり接点もないまま卒業し、
そのまま会うこともなかった可能性が高い人物である。

ところが、不思議なところでウマが合い、G君とは今も友好が続いている。

G君は歯に衣着せぬタイプなので、人によってはムッとしたり傷ついたりすることも
あるかもしれないが、僕は嘘とブレのないG君の姿勢が好きだった。

また、G君は一見プライドが高そうに見えて、並外れた積極性や知的好奇心に
関しては右に出るものがなく、思い立ったらそれがかっこよかろうが悪かろうが即行動に移す。
そんなところも興味深かった。

僕も当時からヘンテコだったので、
G君にとってユニークで面白おかしい存在だったのかもしれない。

高校時代、3年間を同じクラスで過ごし、文化祭や体育祭、修学旅行など
さまざまな行事でご一緒した。
時のバンドブームで一緒にバンドをやったのは、今もいい思い出だ。

どっこいどっこいの成績で卒業して共に浪人し、僕が64流大学にとぼとぼと進学する中、
G君は持ち前の集中力を発揮して猛勉強し、見事C大学法学部に合格した。

卒業後も縁は続き、僕は中小のコンピュータ系出版社へ、
G君は日本でもトップクラスのコンピュータ企業の営業職へ。
G君は営業成績もトップクラスだったそうだ。
年一回くらいのペースでG君と夕食を共にしていたが、20代もそろそろ終わりという頃、

「俺、会社を辞めて映画監督になるための勉強をしようと思う」

という話を聞いたときは、それはもう驚いた。
無類の映画好きであることは知っていたけれど、まさか本当にその道に、
奥さんもいる身で進もうとは。

僕も都合2回転職していて、いろいろドラスティックな変化があり、
慣れた職場を離れて未知の勤め先に移るには、なかなかな決断力が必要だった。

しかし、G君がやろうとしていることはその比ではない。それからほどなくして彼は本当に会社を辞め、すべてを捨てて単身カナダの映画学校に行った。

2年後、カナダから帰ってきたばかりの彼に会った。
彼の話はとどまるところを知らず、いつもどおり聴いていて実に面白かったが、
実現しようとしていることの大きさに、悲観主義的な僕は

「なかなかそう簡単にはいかないんじゃないかなあ」

と思ったりもした。
年齢も含め、

果たして日本においてコネも人脈も完全にゼロであるG君が、
これからどうやって映画監督になれるのだろうか

と心配になった。

しかし、そこからG君の行動力はすさまじかった。

人に会うためのアポも、人並みはずれた行動力で片っ端から連絡し、
わずかなチャンスでもそれを無駄にはしない。

そこから生まれた人脈からどんどん新しい仕事を作っていく。
日本に帰ってきてから、G君が作った人脈は1000や2000では足りないのではないだろうか。

その間、決してきれいごとでは済まないようなつらいこともたくさんあったのではないか
と思うが、G君からネガティブな話は一度として聞くことはなく、
彼はずっと自分の追い求めることだけに集中していた。

同時にG君はとにかく勉強家で努力家だが、そんなそぶりも微塵も見せず、
自分が「知らない」ということを恐れず、むしろ武器にして人と接し、
貪欲にさまざまな経験をしては吸収していった。

そうして、とうとう彼は念願だった、自らが監督を務める映画をつくりあげた。

長らくG君を見てきた身として、
彼自身のドキュメンタリー映画をつくったら面白そうだと思うくらいに、
G君は興味深い人物である。

そのG君が、自らの複雑な出自をファインダー越しに重ね、
初作品ながら「命はどこからくるのか」という深遠で重いテーマに立ち向かっている。

僕は「夢は努力すれば必ず叶う」みたいなセリフは好きではないのだが、
G君の生き方からは、それも嘘ではないと思う。

そして、G君が映画をつくるときに大きなヒントになったという本がある。
『わたしがあなたを選びました』(主婦の友社刊)は、
5年前に死んだ僕の父が勤めていた出版社が倒産寸前に、
最後のヒット作として出した本だった。

今は版権が移って別の会社が発売している。
長男がまだ嫁さんのおなかの中にいた頃に、生前の父が嫁さんに贈った本でもあり、
その後出産を控えた僕の妹に譲った。
そこにも、なんともいえない奇縁を感じた。

G君が撮った映画「うまれる」を、
今度は一友人の初監督作品を見る目ではなく、
純然たる観客として、改めて封切り後の映画館で観たい。

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