体験談より:「末期ガンの夫の立ち会い出産」

12年前、娘を出産したとき、夫は緩和ケア病棟に入院していました。

出産の2か月前、
がんの骨転移による骨盤骨折で入院していた彼に
ずっと付き添っていた私。

入院した時に主治医には
「出産までは、(夫の命は)持たないかもしれません」
と言われました。

出産に立ち会いたいという夫の願いをかなえるため、
急きょ夫の入院していた病院の産科で
出産をすることになりました。

その総合病院の産科は当時立会出産を受け入れておらず、
ずいぶんスタッフの抵抗も強かったようですが、
緩和ケア病棟の主治医の依頼もあり、
出会ったばかりの産科の主治医が
「うちじゃないとできないことなんだ。サポートしてあげよう」と
助産師さんたちを説得してくれたと後で聞きました。

微弱陣痛が丸二日続き、ようやく分娩台に上がると、
すでに子宮口は全開していたようで
夜中の3時でしたが、
緩和ケア病棟の主治医が車いすの夫を連れてきてくれました。

そして、無事に夫は出産に立ち会い、
念願のへその緒も夫が切ってくれました。

家族3人で唯一行えた共同作業だったのかもしれません。

出産のちょうど3ヶ月後、夫は天国に旅立ちました・・・。

娘は4歳くらいまでは、パパの姿が見えていたようです。
よくお話もしてくれてました。

「ママには本当にパパが見えないの?」とも言ってました(笑)

そして、私が再婚してほどなく・・・。ある日娘が、起きるなり

「○○ちゃんは、パパが死んじゃうのがわかってた。だから早く生まれてきたかったのに。
もっと早く生まれてきたかったのに」と大泣きし・・・そして、その日からパタっとパパの
ことを口にしなくなりました。

パパが気を使ってくれたんでしょうね。
早く新しいお父さんに慣れるようにと・・・。

娘を授かったとき、夫の体にはがんが全身転移してました。
治療もできない状況でしたので、出産することに躊躇はありました。
「シングルマザーになることがわかっていて子供を出産していいのか」とも思いました。

でもやっぱり出産してよかったと心から思ってます・・・。

そんな娘ももう中学生。
もうすぐ夫の13回忌です。

いつか、生まれてきたときの話をしてあげたいと思ってます。

(みみすけ)

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★ 映画『うまれる』の体験談より
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