年の瀬の不安 〜施設の子どもたち〜

監督・父の豪田トモです。

以前もご紹介させていただきましたが
長野県の児童養護施設・軽井沢学園の高根英貴さんが
書かれている、とっても素敵な日記です。

許可をいただいてご紹介させていただきますー。

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今日は12月31日。
あと数時間で新しい年を迎えようとしています。

私が事務室でこの原稿を書いている最中、
紅白歌合戦やダウンタウンのお笑い番組を見ながら
大騒ぎしている女の子たちの声が、長い廊下を伝ってここまで響いてきます。

いつもなら騒いでいる子どもたちのところへ走って行き
「もう遅い時間なんだから静かにしなさいっ!!!」と叱るところではありますが、
今日は大みそかなので特別に目をつむろうと思います・・・
 

毎年、年の瀬も押しせまるこの時期になると、
子どもたちの気持ちは不安定になります。

体調不良を訴えて学校を休んだり、
子ども同士のケンカや飛び出しが増えたりと、
私たち大人は手を焼かされるのです。

何故かというと、その理由ははっきりしています。

ボクは今年の冬休みにおうちに帰れるのだろうか、、、

果たしてママは迎えに来てくれるのだろうか、、、

施設に入る前、
どんなにつらい経験をしたとしても、
親や家庭に対する強い憧れを抱きながらここで暮らしている子どもたちにとっては、

帰省(一時的に自宅へ帰ること)できるかどうかは大変重大な問題であり、
不安で不安でたまらない時期なのです。

そのため、
帰りたくて仕方がないのに、
それが叶わぬと薄々気付いている子ほど
情緒的に不安定となるのです。

先日、皆で朝ご飯を食べている最中、
小6と小4の男の子との間でこんなやり取りがありました。

「オレは今度帰省9日間できるけど、
オマエはどうせ今年も帰省できないんだろ?ダセエ~な。」

「いいもん、ボク学園で遊んでるから・・・」

その時、私は帰省できない子のことを馬鹿にした
小6の男子児童をつい怒鳴ってしまったのですが、

子ども同士でもこのような格差があり、
家に帰れることへの優越感を持つような心理が
この場所では働いているのかと考えさせられた一場面でした。

今年の年末年始に帰省のできない子どもたちは
合わせて12人いました。

帰省できない理由は、
親の死亡や病気、拘留などによる養育者不在のケースや、
育児放棄によって帰省を受け入れてもらえないケース。

更には虐待が再発する恐れがあるため
一時的でも帰すことが出来ないケースなど様々です。

このような、
家族統合(家族が元どおり一緒に暮らせるようになること)の
見通しの立たない子どもについては、

子どもの意志を最大限尊重しながら
慎重に進めていく話ではありますが、

「ホストファミリー(気軽にできる里親体験事業)」

の制度を使って、子どもの養育を一時的に
一般のお宅へお願いすることもあります。

そのような取り組みによって、
全く帰ることが出来ない子どもであっても、
良いご縁によりホストファミリーさんと出会い、
夢叶って"帰省"ができるようになった子もいます。

その反面、こんなケースもあります。
高校生くらいになると、家庭の事情を理解できるようになるのか、
それとも自分を施設に入れた親を冷めた目で見ているのか、
理由は定かではありませんが、

全く家には近寄ろうとしない子どもたちもいます。

どちらにせよ、最近は帰省できる子よりも、
できない、または帰りたくない子どものほうが増えているのが現実です。

紅白も終わり、
今年も残すところあとわずかとなりました。

そろそろ手を止めて子どもたちのところへ行こうかと思った矢先、
中学生の女の子が私を呼びに来てくれました。

「たかねっち~年越しそばあるから食べにきて~」

そして保育士の作ってくれたそばを皆で食べました。
私はおかわりをして2杯食べました。

テレビでは"新年まであと○○分○○秒"という
カウントダウンが始まっています。

そして、新年まであと20秒、10秒と迫ったとき、
高校1年生の女の子が

「どうするどうする??
そうだ!ジャンプして空中で年を越そう!!」

と言いました。
私は急いでその提案に乗り、
3人の女の子たちと一緒に

「さん・にい・いちっ!!!」

の掛け声で一斉にジャンプしました。
着地後

「あけましておめでとう!」
「今年もよろしく!!」

と互いに言い合いました。

淋しい思いも多くあるけど、
ここには楽しいことだって沢山あるよ。

そう思ってもらえるように、このお正月、
家に帰ることのできない子どもたちに対して、
いつも以上に"よしよし"してあげようと思います。

新年を迎えるにあたり、
ここで暮らす子どもたちはもとより、
皆様にとっても素晴らしい年でありますように☆

(文:高根英貴さん)

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