双子の夢 〜施設の子どもたち〜

監督・父の豪田トモです。

以前もご紹介させていただきましたが
長野県の児童養護施設・軽井沢学園の高根英貴さんが
書かれている、とっても素敵な日記です。

許可をいただいてご紹介させていただきますー。

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誕生からわずか数日後に、
母親の育児放棄により乳児院(0歳~2歳位までのこどもが利用する施設)
へ預けられた双子の姉妹がいました。

かろうじて名前だけは
親から授かることができた姉セツコと妹のトシエ(共に仮名)は、

乳児院ですくすくと育ち、
2歳の誕生日を迎え退所を控えた頃、
母の失踪によって再び行き場を失い、この軽井沢学園へやってきました。

入所当時のことは私も就職する前でしたのでわかりませんが、
昔からいる職員の話によると、
二人は何をするにもいつも一緒で、
好きな食べ物、服の好みも全て同じの大変仲の良い姉妹だったようです。

また、
二人は共に喘息持ちで頻繁に発作を起こしたため、
通院しながら毎日薬を飲まなければならない体の弱い姉妹でもありました。

それでも、体調の良い時は必ず学校へ通い、
成績はいつも優秀で、周囲の大人たちからの評価も高い二人でした。

そんな虚弱体質の双子姉妹は、
不思議なことに発作を起こすのもいつも同時期で、
二人そろって入院することもしばしばありました。

そして、

いつしか二人は看護師になることを夢見るようになります。

彼女たちの話によると、
入院した時、いつも看病してくれた看護師さんが
とても優しくて大好きだったので、
自然と看護師に憧れるようになったとのことです。

思春期に入り、職員にも反抗するようになった二人。

些細なことで担当保育士と言い合いとなることも増え、
そのたび「もう嫌だ!こんな学園早く抜けたい!!」
などと大声で叫びながら廊下の壁を蹴る彼女たちの姿を
私自身、何度か見かけました。

やがて二人は高校生となり、18歳の退所時期が迫ってきてもなお、
唯一の身寄りである母の行方はわからぬままでした。

そのような後ろ盾のない姉妹ですから、
退所後どのように生きてゆけばよいのか、
どの様にここから送り出してゆけばよいのか、
当時の大きな悩みの一つでもありました。

「彼女たちの夢を応援したい。」

そのように思っても進学と生活資金の両方を
捻出しなければならないという大きな壁があります。

そのため、様々な奨学金や貸付制度、
働きながら学べる環境はないかなど、
皆で手分けして探りました。

しかし、授業料の一部助成はあっても、
短大卒業までの生活資金まで援助してもらえるような制度は
存在せず、ある程度は自分で借金をしたり、
働きながら通うしか道がありませんでした。

そのような現実を知ってもなお
彼女たちは夢を諦めず健気でした。

少しでも貯金をするため高校生にとって
必需品である携帯もクラスで唯一持たず、
土日平日問わず、アルバイトに励みました。

しかも、クラスでトップの成績を維持しながら・・・

今、双子の姉セツコは
小学生の頃からの夢を叶えて、県内の病院に勤めています。

彼女は高校卒業後、
経済的な理由により看護学校へ入ることが出来なかったため、
昼間病院で看護師見習いとして働きながら、
准看護師の資格を得るために夜間学校へ通いました。

そして、今年ようやく正看護師の資格を取ったのです。

双子の妹トシエはというと、
看護師ではなく保育士となりました。

そして現在、私たちと同じ児童養護施設の職員として、
県内の某施設で、親と離れて暮らす子どもたちの養育に携わっています。

彼女は高校卒業後、
学費の安い公立の短大へ進学して、
学生寮で生活しながら卒業しました。

何故トシエは保育士になったのでしょうか。

その理由は、
トシエが中学生の頃に担当していた保育士が退職する時に、
彼女がその保育士に宛てた短い手紙から垣間見ることが出来ます。

「さとこ先生へ 
6年間本当にお疲れ様でした。

さとこ先生が私の担当だった時は、
毎日が本当に楽しくて、笑顔が絶えなかったと思います。

楽しかったこと、悲しかったこと、いろんなことがあったよね。

たくさん怒られたり、反発したり、ケンカもいっぱいしたけど本当に楽しかった。

このことは絶対に忘れないよ。
いつも明るくて、楽しくて、元気いっぱいのさとこ先生が大好きだよ。
今まで本当にありがとうございました。
またいつでも学園に遊びに来てください・・・」

物心ついた頃から保育士の背中を見て育ってきたトシエが
同じ道を目指した訳は、
泣いたり笑ったり日々の積み重ねによって結ばれた
保育士との固い絆からなのだろうと私は信じています。

子どもと向き合うことは、
楽しいことよりも、悲しいこと、頭にくること、
心折れることのほうが多いかもしれません。

それでもなお、現場の保育士たちは、
子どもたちを信じ、受け止め、真正面からぶつかっていきます。

それが仕事とはいえ、
何故そこまでひたむきになれるのか。。。

今回この原稿を書くにあたり保育士たちに聞いてみました。
すると、返って来る言葉は皆同じ。

子どもたちの笑顔やさりげなく見せる感謝の気持ちに触れた瞬間、
嫌なことも吹っ飛んで、よしっ頑張ろう!と思えるのだと。。。

見返りを求めてはいけないとわかってはいつつも、
子どもたちから得られるものの大きさに、
改めて気付かされました。

最近、机と向き合うことの多い私ですが、
もっと子どもと向き合わねばと、反省させられます。

(文:高根英貴さん)

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